ハピエコ・オリジナル小説

落語「恋愛テーマパーク」其の一

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ええ、毎度ばかばかしいお笑いを一席。

昨今は、男女の仲もオープンになってきまして、できちゃった婚なんてのも、珍しくなくなってきましたが、 反対に婚活なんてのも盛んになってきましてな。
なんといっても、結婚しない独身貴族や結婚できない負け犬組が増えてきてるんだそうで。悩みは尽きません。

「もしもし、マイちゃん、ひなのよ。ちょっとお願い。」
「もしもし?もう、こんな遅くに…。メールでいいでしょ。」
「ごめんね。でも、私のことをちゃんとわかってくれて、アドバイスくれて、一緒に解決してくれるやさしい人で、 彼氏がいないのはマイちゃんだけだから。」
「よけいなお世話よ。で、いったいなんなの。」
「占いテーマパークのデイズってあるの知ってる?」
「ああ、確かデイズって、毎日の占いをしてくれる、占いと冒険のテーマパークでしょ。」
「そのデイズの隣に、新しいパークができたって知ってる?」
「ええと…、デイズの西側にできたのよね。確か、デイズ西ね。」
「そうそう、そのデイズ西よ。私がおごるから、一緒に行ってくれる?」
「いいけど…。いったいどうしたの急に…。」
「ありがとう。じゃあ待ち合わせ時間と場所はメールで送るから。じゃあね。」
さて、友達思いのマイちゃんは、翌日占いテーマパーク、デイズ西に出かけました。
ここは、日本でいや世界で一つ、遊園地で遊んで、占いもできる、占いアミューズメントパークなのです。

「遅いなあ、いつものことだけど…。」
かなり遅れて、ひなのがやってきました。
「ごめん、ごめん。電車が事故で遅れてさあ…。さあ、行きましょう。」
「ははあ、その元気のなさから推理して、さてはユウ君とトラブルね。」
「ビンゴ!ユウ君たら、私とつきあってくれるって言って、一回デートした後、連絡が来なくなって…。 そしたら、こんな時に限って、ママからまさかのお見合い写真がきちゃってさ。」
そういいながら、ひなのは、バッグの中からチラリとお見合い写真を見せました。
「私、まだ大学生なんだけど。もう、いや。今日、ここで占ってもらって、決着をつけようと思ってね。」
「やっぱりそんなところか…。じゃあ、行きましょう。」
ってんで、二人は、人の波の中を、デイズ西へ入って行きました。

「あ、かわいい着ぐるみのお出迎えよ。」
見ると入ってすぐの広場に、きれいなお花畑があり、その前で白いもこもこした着ぐるみが愛嬌をふりまいています。
「あはは、あれはね、占いによって新しい自分に脱皮しようというマスコットのダッピー君よ。 ほら、よく見るとサナギに手足や、かわいい目玉がついているでしょう。」
なるほど、よく見ると、背中にかわいいひび割れまであって、もうすぐ脱皮しそうです。
蝶になるのかカブトムシになるのか…なんかワクワクします。
「私も今日、ここで古い自分を脱ぎ捨てて、明日に向かって羽ばたくんだわ。」
「そうなればいいけれど…。」

やがて前方に、大きな建物が見えてきました。
「ほら、あそこにある巨大なピラミッドが、有名なホテルミイラコースターよ。 ホテルの地下二あるコースターに乗って、ピラミッドの中を奥まで行くといろいろな仕掛けのあとに神秘の扉が開くんだって。 そして、そこで黄金の棺の中からファラオのミイラがむっくり起き上がってお告げをくれるんだって。ああ、でも予約でいっぱいみたいね。」
そこで二人はピラミッドを離れ、奥の純和風の大きな建物に行きました。
「ほら、ここがいいわ。タワーオブテラよ。」
なるほど、大きな五重塔の下に、お寺があります。
「タワーオブ寺ってわけね。」
五重塔の中の椅子に座ると、どんどん上へと上昇していきます。雲海を突き抜け、オーロラを超え、蓮の花の咲く、極楽浄土へ。 そこで光の3Dショーで至福の時を味わいます。でも、地上にもどろうとすると、閻魔大王が現れそのまま真下へ、急降下。
「キャー、なにこれ。なんでもっと下まで落ちるの?」
地上にもどれると思ったら、床がなくなっていてさらに深い闇の中、地下世界へと突っ込んでいきます…。
地獄までまっさかさま…。火炎地獄を抜け、血の池地獄に潜り、針の山に着地する。串刺しだ!全身に鳥肌が…。
やがて天界から光が差し込むと、ゆっくりと地上の世界へ戻って行くのです。
「あー、こわかった。まさしく地獄に落ちる恐怖ってやつね。さて、占いはこの奥ね。」
尼さんのコスチュームを着たお姉さんがやってきて、巨大な大仏のなかへと案内してくれます。
「あ、解説が書いてあるわ。」

『タワーオブテラ;前世占い 前世を透視し、現世での人生の輪廻を探る』

「じゃあ、私はここで待ってるからね。」
「はい、桜井ひなの、出撃します。」
すると神秘的な仏壇の前で徳の高そうなお坊さんが待っています。
「祈りなさい。」
「はい。」
ポク、ポク、ポク、ポク、チーン。
「わかりました。あなたの前世は、室町時代の大きな青物商の娘でした。 母のような大きな愛の持ち主だったのですが、浮気な男にだまされているとも知らず、恋煩いで死にました。」
「えー、ショック、恋煩いで死ぬなんて…。」
「恋をするとなんでも許してしまうあなたのやさしさが、ダメ男を付けあがらせるのです。 相手のダメなところといいところをきちんと見つめて付き合うようにしなければいけません。他に何か聞きたいことはございますか。」
すると、ひなのはもじもじしながら、一枚の写真を出した。
「この、ユウ君とうまくいってなくて…。大学の合コンで知り合ったんですけど…。 ケンカしたわけじゃないけれど、だんだんメールも来なくなって…。」
「ほう、なかなかハンサムですな。でもこの男は、業(ごう)が深い。 この相が出ていると、不倫で知り合った相手はまた平気で別の相手に不倫をします。 合コンで知り合った相手は、恋人ができても合コンを繰り返し浮名を流します。 懲りずに何度も繰り返す、それが業なのです。あなたの元彼は、前世での因縁を繰り返す、その業の輪の中から抜け出せないでいます。 あきらめなさい。すぐに別れるのです。」
「そんな!」
チーン…。

「あーあ、ユウ君いい人なのに、なんであんなこと言われるんだろう。まったく、あのハゲ坊主!」
「でも実際ユウ君ハンサムだし、モテるみたいよ。私も悪いウワサ聞いてるし、そのお坊さんの占い、けっこう当たってたりして…。」
「マイちゃんたら、私がへこんでると思ってるでしょう。でも、平気。あんな占いなんかに負けない。 ええーい、もう一か所行って、今度こそ幸福を勝ち取るわ。」
「あのう、ひなのちゃん、占いって、そういうもんじゃないと思うんだけど…。」
「ドスコイ!うん、ひなの負けないから。心配してくれてありがとう。さあ、次行くぞ。オラ、オラしょぼくれてんじゃねえぞ!」
マイちゃんは、後ろからついていきながら心の中で思いました。
(会話が成立してないって…。)

次にやってきたのは、長めのいい海岸を見下ろす、ドーム屋根の博物館のような建物です。

『ミトコンドリアンハーバー・マザーランズ;遺伝子占い
恋人同士がお互いの遺伝子を持ち合い、相性を見る』

と案内板に書いてあります。
「遺伝子を持ち合うなんてひなのちゃんひとりじゃ無理じゃない?」
「フフフ、ダンナ、その辺はぬかりありませんぜ。」
ひなのは、そういうと、小さなビニール袋に入れたタバコの吸い殻をとりだしました。
「これにユウ君の唾液が付着しているはず。じゃあ、行ってきます。」
「あきれた…。いってらっしゃい。」
マイちゃんは、ストロベリー味のポップコーンをほおばりながら、ミトコンドリアンシーのウォーターミュージカルを眺めていました。
最初海面が光り、たくさんの泡とともに、巨大な貝が浮かび上がります。 その貝が開くと、光の中から最初の女性イブが登場。まるでヴィーナスの生誕です。 イブは、ニンフやマーメイドたちと、あざやかなダンスを踊ります。 そして、イブの子供たちが、一斉に世界中に旅立ち、噴水でできた花園や宮殿、嵐や怪物と出会います。 海が大きく渦巻き、怪物がぎらぎら目玉を光らせて水柱とともに浮かび上がるシーンは圧巻! それがあちこちに広がるほどに人数が増し、いろいろな人種民族が現れ、最後は色鮮やかな噴水アートの中、 世界中の人々の楽しいダンスになって行くのです。
そのころ、巨大な地球儀が見下ろす博物館の一角で、ひなのは占いを受けていました。
ダーウィンのような長いひげの館長は、枝分かれする大きな図を指差しながら解説を始めました。
「偉大なる母の館、マザーランズにようこそ。人間の細胞のミトコンドリアの遺伝子を追いかけていくと、 すべての人間は、約15万年前にアフリカ大陸にいた、一人の女性、イブに行きつきます。 ミトコンドリアの遺伝子は母から子へ受け継がれます。この樹形図はそれを現したものです。 さて、あなたと彼の遺伝子も判明しました。」
「ええ!もう、わかっちゃったんですか…。」
「あなたは、日本人に多い、D型、中国人の系統で長生きできますよ。 彼はちょっと珍しいM型、細かく見ていくと東南アジアの先住民に多いですね。」
「ええ、ショック!私、本当は日本人じゃないんですか?」
「…いや、ご先祖のお話です。」
「それで、気になる二人の相性はどうなんですか?」
「これは典型的な、一目ぼれですね。であった瞬間に、運命の人ではないかという胸のときめきがあったでしょう。」
「そうなんです!すごい、その通りなんです。ズバリ当たってるわ。」
「彼のそばに寄るだけで、いい香りがしませんでした?」
「した、した、したんですよう。なんでわかるの。」
「それは、運命なのではなく、あなたの遺伝子が、彼の遺伝子に反応したからです。 遺伝子は、自分と違う系統の距離の離れた遺伝子を求めるのです。 離れすぎて人種や文化が違いすぎると難しくなりますが、同じ日本人同士で遺伝子の距離が離れていると、 お互いひきあうのです。あなたと彼の遺伝子マイルは、同じ日本人に見えて、8,7マイルです。 遺伝子マイルが高いので、一瞬にして恋におちる。生理的に、体臭さえ魅力的に感じるわけです。」
「ということは、もう、結ばれるしかないってことですか。」
この占いは当たる、きっと二人は結ばれる。ひなのはワクワクしながらその言葉を待ったのでした。
「残念ながら、この組み合わせは、私たちの遺伝子データによりますと、出会いが衝撃的すぎて、 かえって深く付き合うようになってからが問題なのです。付き合い始めてから幻滅したり、 価値観の違いからトラブルを起こしやすい傾向があります。少し付き合ってうまくいかない時は、深入りしない方がいいようですよ。」
「そんな、今、うまくいってないっていうのに…。」
「やはりね。それなら話が早い。お嬢さん、この辺が引き際ですぞ。 別れろとは言いませんが、一度お互いをじっくり見つめなおしてはいかがでしょうか。 遺伝子の呪縛から一度離れて、お互いの価値観や、趣味などを考えてみましょう。」
「そういわれると…、ユウ君とは、好きな食べ物も音楽も、映画も違うし…、私はタバコ吸わないし、 ユウ君は、お風呂に毎日は入らないって言うし…。」
「そうですか…。結論はすでに出ているようですね…。」
「ガビーン!」

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